2021年度学部基礎「政治思想」


[授業科目の概要]

1 概要

 この講義では、近代ヨーロッパの政治思想史と現代の政治理論を体系的に学習し、現代世界の法・政治制度を支える基本原理について理解を深めることを目指します。さらに、今日それらがどのような限界に直面し、どのような問い直しを迫られているかを検討することで、一人一人が自分の思想を鍛えるための材料を提供したいと思います。

2 到達目標

(1)政治思想の古典に直接取り組む経験を積むこと。

(2)近代の自由民主主義の基本原理を理解したうえで、それらが今日直面している課題を説明できるようになること。

(3)今日の政治や社会にみられる具体的な課題を、国家と市場、平等と公正、普遍性と多元性、自由と権力などの抽象的な概念を使いながら分析でき、かつ自分の立場を論理的に展開できるようになること。

3 授業の進め方

(1)オンデマンドの授業とします。講義のレジュメとビデオはgoogle classroomを通じて配信します。

(2)あらかじめ政治思想の古典をリーディング・アサインメントとして指定します。それらに目を通したうえで、授業のビデオを視聴してください。

(3)毎回の授業の最後に質問事項を用意しますので、アサインメントと授業の内容を踏まえ、コメントを提出してください。

[他の授業との関連]

 基礎科目の「政治学」とともに履修することで、理論と実証という政治学の主要なアプローチを学ぶことができます。ただし、他の講義を受けていなくとも理解できるよう配慮します。

[授業の内容]

以下は現時点での予定です。進度によって変更する可能性があります。

@オリエンテーション

第1部 近代の政治思想

A国家と主権(ホッブズ、シュミット)
B国家論の展開(戦争国家、財政=軍事国家、租税国家)
C近代の自由主義(ロック、スミス)
D近代の民主主義(ルソー、カント、トクヴィル)
E自由主義批判(ヘーゲル、マルクス、ネオ・マルクス主義)

第2部 現代の政治理論

F現代の民主主義(シュンペーター、ダール、アレント)
Gネオ・リベラリズム(バーリン、フリードマン、ハイエク)
H現代の平等論(ロールズ、運の平等論、民主的平等論)
I普遍性と差異(フェミニズム、マルチカルチュラリズム)
J現代権力論(ルークス、フーコー)
Kデモクラシー論の展開(ラディカル・デモクラシー、熟議デモクラシー)
Lグローバル化と国家(グローバル・ガバナンス、リベラル・ナショナリズム)

[テキスト]

教科書はありません。リーディング・アサインメントとして政治思想の古典を抜粋したPDFを用意します。

ホッブズ『リヴァイアサン』
ロック『統治二論』
スミス『国富論』『道徳感情論』
ルソー『人間不平等起源論』『社会契約論』
カント『道徳形而上学原論』『永遠平和のために』
ヘーゲル『法哲学要綱』
マルクス『ヘーゲル法哲学批判序説』『ドイツ・イデオロギー』『資本論』
トクヴィル『アメリカにおけるデモクラシー』
シュンペーター『資本主義・社会主義・民主主義』
アレント『全体主義の起源』『人間の条件』
バーリン『二つの自由論』
フリードマン『資本主義と自由』
ハイエク『自由人の経済的秩序』
ロールズ『正義論』
サンデル『自由主義と正義の限界』
テイラー『自我の起源』
マッキンタイア『美徳なき時代』
セン『不平等の再検討』
オーキン『正義・ジェンダー・家族』
ルークス『現代権力論批判』
フーコー『監獄の誕生』『性の歴史』
ハバーマス『公共性の構造転換』『事実性と妥当性』
ムフ『政治的なるものの再興』『民主主義の逆説』

講義を理解する助けとなる参考図書として以下を挙げておきます。

福田歓一『政治学史』東京大学出版会、1985年
川崎修・杉田敦編『新版 現代政治理論』有斐閣アルマ、2012年

その他の推奨文献は、講義の最初に配布します。

[成績評価の方法と基準]

(1)毎回のコメント(30点)
アサインメントを読解し、オンデマンドの授業を視聴した後、提示された質問に対して短いコメントを提出する。毎回提出。成績は、それらのうち不定期で3回分をカウント(3×10点)。

(2)中間テスト(30点)
学期中に15分程度、2回のオンラインの中間テストを行う(2×15点)。
それぞれ第1回〜第6回、第7回〜第12回の授業内容が対象。選択式。

(3)学期末レポート(40点)
テーマは授業内で発表する。3200字以上。

以上で60点以上を可の目安とし、単位取得者の1/3がA、Aの1/3がA+となるよう相対評価とする。

[受講生に対するメッセージ]

・現実の政治問題と抽象概念を往復し、思想的に現実政治を分析できるようになることを目指します。

・完全オンデマンドの講義となるため、ご不便をおかけします。授業をこなしながら、やり方を工夫していきたいと思っています。